Japan 03.01.2022
GfK Insight: 不安定な市場環境におけるマーケティング活動のかじ取り
不安定な市場環境におけるマーケティング活動のかじ取り
ロックダウン中のマーケティングおよび広告の動向を分析
弊社の前回のインサイト記事では、新型コロナウイルス感染症による影響や回復のシナリオを取り上げました。今回の記事では、コロナ禍と折り合いをつけながら企業が取った行動と、不確実な時期に成功するための戦略を検証します。
さまざまな変化… しかし土台は同じ
コロナ禍は、企業の経営とマーケティングのあり方に世界革命とでも言うべきものをもたらしました。変化は急激で、ときには容赦のないものでした。しかし、その中でも 2 つの根本的な要素は変わっていません。それは、ニーズに合った商品に対する消費者の需要、そして自分が共感できるブランドと関わろうとする動機です。
消費者の需要とブランドコミュニケーションの土台は変わっていないのです。 ただし、消費者の習慣や行動、購買経路は、ますます複雑化し細分化され、この傾向は続いています。
ロックダウンにおける勝者
2008 ~ 2009 年の不況下と同じく、ロックダウンとの「戦い」の明らかな勝者は、経済的に抜き差しならない状況、特に店舗の休業を余儀なくされた時期でも、イノベーションと消費者とのコミュニケーションに集中し続けたブランドです。これらのブランドは今後もその地位を保つでしょう。
その一例にゲーム業界が挙げられます。 ロックダウン中に予想されたとおり、2020 年は、ビデオゲームとゲーム機本体の購買と利用が大幅に上昇しました。主要企業は、投資のチャンスと見て、2020 年 11 月後半の 2週間だけで対前年比80% 増1の 4,500 万ドルの広告費を投入し、新しいゲーム機とビデオゲームタイトルを発売しました。
スピードも重要です。前回のインサイト記事で取り上げたように、実店舗型企業の中でも、最も成功した企業では「デジタルへの転換」を果たし、約90%もの成長2を遂げています。もちろん、多くのeコマース専業の企業は、ロックダウン中も 41%上昇という安定した成長を見せました2。
… そして敗者は?
商店街やショッピングモールでシャッターを下ろした多くの店には、それぞれの事情があります。もちろん、多くの企業はコロナ前から問題を抱えていて、パンデミックで追い打ちをかけられた形でした。しかし、ロックダウンを困難ではなくチャンスと見て、それに応じた投資を行った企業もありました。その結果、ブランドロイヤルティーを維持し、生き残りを確実にしました。
広告費を大幅に削減することはベストアプローチなのか?
2020 年 9 月、オーストラリアにある Ehrenberg-Bass Institute のマーケティング サイエンス教授兼ディレクターである Byron Sharp 氏3は、コロナに対する最善のアプローチとされたのは、広告の停止であったと述べました。これは、2010年のHarvard Business Review のリサーチ プロジェクトから得られた従来の考え方と相反するものです。このプロジェクトでは、不況下で「最も成長したのは、[選択的な] コスト削減と将来の成長に向けた投資の両面を重視した企業である」4と結論づけていました。
それにもかかわらず、2020年のロックダウン中は、有名なメガブランドや誰でもよく知る企業を含む多くの企業が広告やマーケティング活動を停止しました。
「2008 ~ 2009 年の不況の教訓として、これらのブランドは単なる広告停止が正解ではないと学ぶべきでした」とSpencer Ng(GfK の APAC マーケティング アナリティクス リード)は話します。 「弊社の保有する販売動向データで示されているように、経済的な苦境の時期でも消費者の需要は単に蒸発したわけではありません。事実、多くのカテゴリーで増加しています。」
「したがって、マーケティングや広告において、望ましいアプローチは、やるかやらないかを決めることではなく、状況を絶えず評価し直して、そのときの消費者の状況に向き合い、うまくいったこと・いかなかったことを分析し続けることです。」
昨年12月に、世界的なマーケティングファームである WARC は、世界の広告費が2020年に10.2%(634億ドル)減少する見込みだと報告しました。この大幅な投資削減には、自動車、小売、旅行、観光セクターが大きく影響していました5。
PwC Australia によると、2020 年にメディア支出を 5,000 万ドル削減したブランドは、平均で同年の売上の 1 億 3,000 万ドルを失うとのことです6。
コロナに関連した広告メッセージにシフト – しかしその効果は?
パンデミックのさなかでもマーケティングを続けた企業にとって、コロナに関連する広告メッセージの採用はすぐにありふれたものとなりました。しかし、このようなアプローチやメッセージは効果があったのでしょうか。
この戦略に効果があったかどうかについては、まだ意見が割れています。信頼を再構築する機会になったと見る人もいますが、類似のメッセージが多すぎたので、ノイズの中から抜きん出て、消費者の共感を得ることが難しいのは明らかでした。
総じて、ブランドのコアバリューを守り、また、それが消費者の価値観と合致している必要がある、ということを再認識する機会になりました。
2021年における広告・マーケティング費の回復
WARC は、2021 年のマーケティング・広告支出は 6.7% 増加すると予測しています5。コロナ前のレベルには戻っていないとはいえ、これは強い回復を示しています。予想よりも早い立ち直りの兆候は既に見られています。実際に、Mediaoceanが発表したデータでは、主要なデジタルプラットフォームでの広告費は2021年3 月に31%上昇しています。これは、2020年1月以降で最大の増加です7。
大手広告会社では、世界のマーケティング・広告投資が2021年に6,000億ドルに達すると見込んでおり、中でもデジタルメディアへの支出増加が最も多いと予想しています8。 これは、インド(10.8%)、英国(10.4%)、フランス(8.9%)といった主要国での投資の上昇によるものです9。
新たな不確実性の時代
Spencer は下記のように述べています。 「まだ低迷期は続きますが、ロックダウン中に停滞していたセクターにとって、効果的なマーケティングの重要性は、今回恩恵を受けた企業よりもさらに高いものとなっています。大きな打撃を受けた業界は、支出するマーケティング予算のあらゆる部分が売上と ROI の向上につながるか確かめる必要があります。」
「これを効果的に行うには、オーディエンスにリーチする最適なチャネルおよび売上に繋がる重要な要素の特定と、各プラットフォームに対する支出レベルの最適化が必要です。デジタルチャネルは、ロックダウン中は極めて重要でした。そして今後も大きな役割を果たし続けるでしょう。一方、マーケターにとって、従来のチャネルに少なくともある程度の焦点を戻すときが来ています。」
「ブランドロイヤルティーを維持し高めるには、『一番に思い浮かぶ』ブランドであることが必須です。また、マーケターには、マーケティング活動が売上に与える影響を測定、予測、理解する能力が必要です。ここで成功の鍵となるのは、適切なツールと知識を備え、組織内への発信、データに基づく意思決定、状況に応じた迅速で柔軟な軌道修正を可能にすることです。」
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次回のインサイト記事では、ロックダウンから抜け出そうとする中で見られる動向と、常に変化する状況下でビジネス成長につながる手段を講じるために、マーケターに必要な戦術やアプローチを検証します。どうぞご期待ください。